『調理場という戦場 「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』斉須政雄/著 木村俊介/聞き手 朝日出版社


今までで一番泣いた本です。
健気で真っ直ぐで謙虚でフェアで美しい。
自分がせめぎあいながら生きてた時期が甦って、
一緒に過ごした上記女性に勧めたという経緯です。
あの時期はもう異次元のようで、
今も、あの時に関ってなかった世の中全ての人を
騙しているような気がするくらい、
とんでもなかったです。
あの頃の私だったら文句言われたら「ざけんなっ、キャパいっぱいやってんだよ!」
って斉須さんと同じ科白を何かを投げ付けながら言ってましたね、うん。
おかげでその頃を知ってる人は今でも笑顔に緊張があります。

ソースをスープのように飲む生活で、斉須さんは、
足に静脈瘤が出来ても
「そうしないとフランス人の身体、生理は分からない」


「純粋なことだけ教えて、すばらしい力を宿すかというと、
宿さないんです。
それと同じですよ。いいことをできる人は、悪いことだって、できます。」


「まわり道をした人ほど多くのものを得て、滋養を含んだ人間性にたどりつくんだ」


「早くゴールをするな」


「自分できちんと雑用もやるからこそ、力を宿すのだと思っていたから。
ぼくは、下の人を蹴落とすために力を宿そうとは思わなかった。」


掃除も率先しておこなっているコート・ドールの調理場の美しさ。
某ダス●ンがキッチン用マットを売ろうとしても
「ある汚れをないことにしたくないので」ときちんと説明する斉須氏。


(ヴィヴァロワというレストランのクロード・ペイローさんは)
「精神的にも物質的にも、常に、人におみやげをあげている。」


「窮地におちいってどうしようもない時にほど、
日常生活にやってきた下地があからさまに出てくる。
それまでやってきたことを上手に生かして乗りきるか、
パニックになってしまって終わってしまうか。
それは、ちょっとした日常生活での心がけの差なんです。」


「午前三時半に市場に着いていなければならない。その場合には下宿を二時半に出る。
『三〇分しか寝ていないのに』なんて日もしばしばで、『ぼくは、いつ倒れるのかなあ』と思っていました。」


「『こいつは牙をむくかもしれないな』という部分を
相手にきちんと認知させないと、
こちらがグロッキーになるまでやられてしまいます。」

一番、堪えられないのは友人、かのベルナール氏との様々なエピソードです。
謙虚は日本人の特質のように思われがちですが、とんでもない過ちでした。
ベルナール氏も凄い、すごいよ!と泣きながら読んでたらやっぱり凄い人になってた。
NHKでみたことがある、あのひとだったんだ…。