『コレクター 上』ジョン・ファウルズ 小笠原豊樹/訳 白水社

傑作、名作はその本をひらくと、自分の身体がまるごとどこかに連れ去られてしまう。
そして「自分」がなくなって、その主人公と同じ行動、思考をとってしまうのだ。
この本も、あっというまに「階級社会」の倫敦に連れていってくれた。

『女子高生誘拐飼育事件』は女の子の理性やプライドが早期に剥がれてしまい、殆どポルノになってしまったけれど(実際の事件とは聞いてますが)、この『コレクター 上』は階級が「上」の彼女をどのように扱うのかも非常にひとつひとつ丁寧に段階的に描かれてます。

彼女はかなり気丈というか、今の日本人なら「おいおい、もうちょっと頭を働かせて下手に出ろよ」と思うのですが、そこは、やはり、ストーカーという言葉も概念もなかった時代。
寧ろ、この本が発芽になって認知されたという話もありますよね。


彼女、余裕というかバカっつーか、いやそのバカさがプライドなんですが、誘拐犯相手に原発をアジってどーすんだ。世界平和より我が身の明日だろってえ状況です。

映画化してるのを観てなくてよかったです。面白い。
鬼畜といわれようと仕方ない。