『わからなくなってきました』宮沢章夫新潮社

語り口が松尾スズキと違うのはソフトなこと。スピードも緩やかだし、なんとなく包容力も感じる文章です。辛口なことも悪口に聞こえないのが味です。
いつもキッツイ、キッツイと言われる身としては学ぶところが多いです。


大谷崎の『痴人の愛』ネタがあるのです。

恋人が出来たA子にしばらくしてから会うと洋服の趣味が変わり、話し方も違う、変貌には奇妙な匂いがあった。
そして「変なの。彼は縛られたりするのが好きなの」といい、A子もさらりと「私も嫌いじゃないけど」と。


そこで宮沢氏は「悪しき文学主義も、もしかしたら、何かの役にたっているのかもね」と書いていて、奇妙なのは「文学」にそうした力がまだ残されていたことだ。


ある特別な種類の、<幸福な出会い>である。「文学」が出会いに貢献した。

とあります。
映画も文学も漫画も<出会い>の為にあった私としては…普通は違うのかと。