『黄金蝶ひとり』太田忠司2004/01講談社

「かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド」第3回配本です。栄えある第1回配本の島田作品『透明人間の納屋』では少年少女に完膚なき絶望をたたきこんだに違いないこのシリーズ、やっと光明が見えました。


網中いづるさんの装画、挿絵の馥郁とした美しさがこの作品を更に引き立たせているし、子供が手を切らないように、頁の角が丸く裁断されているのも、祖父江さんと阿部聡さんの細かい心遣いだ(『くらのかみ』も読んだけど、同じ様だったか失念)。
実は太田忠司の作品も初めて。でも1959年生まれで自分よりも年上の作家なので気負わず読める。


のっけから「はじめにーーキミに挑戦」だし、ラストは驚かせてくれるし、まさか(ネタバレ)ラブストーリーでもあったなんて、ますますホノボノしてしまいましたよ。
ネタの一つはUFOだなんて、これまたタンポポのほほえみ満開なネタだし。いや、この作品に関してはOKでしょう!

また、後半の橙色の頁の在り方が非常に秀逸。こういう謎を遺していくのが大人の役割。無責任とは似ているけど、違う。
私は早速この作品によく似たポオの題名の作品を読む心算です。だって謎が解けないから。


「そして、わたしがキミに本当に伝えたいと思っていることもね。」


後付け隣りの作家紹介で親切にも好きな作家や「『美奈の殺人』『昨日の殺人』の新本格・青春三部作は著者の全身全霊をうちこんだ名作」とある。誰だ、これ書いたの。…これら読んだら他の読まなくて良いってことじゃないですか。

念の為、勿論、島田先生は嫌いじゃありませんが、あの作品にこのシリーズはないのでは?学ぶのに早過ぎる事はないかもしれませんし、子供扱いするのが却って失礼という論理はあるでしょうが。