『沈黙のゲーム』 グレッグ アイルズ


「今日、自分が幸せになることをしよう。十年後にも楽しく思い出せることを。」


グレッグ アイルズの女性キャラはいつも初期設定の男性キャラよりも魅力的です。ハーレクイン・ミステリといっても過言ではない、尊くおごそかで侵しがたい女性の扱い。そして中身の重厚さと本格ぶり。物語の進行上、引っ張られるように男性キャラも気骨をあらわしていく。主人公は肉体美を誇る人物ではないのですが、精神力でそれをカヴァ?していきます。当初は葛藤ばかりの男性キャラが肚を括って一つ一つ勝利を収めていくんです。


既記の作品中、米国では南部で物語が展開することが多く、人種問題も多少は出ていましたが、今回は今迄さらりと通過してきたものを真正面からとらえてます。見過ごしても生活はできるのに、敢えてそれにケリをつけ、自分という人間の矜持にするのがアイルズ。アイルズを読む度にちょっと人間でいるのが嬉しくなります。
今回は8章から加速してきました!下巻からは全開で多様なアクションも出てきますのでご安心を。そして講談社文庫海外作品お得意の法廷対決で幕!既刊『24時間』以外は全作お勧めです!!


流石、アイルズ!この作品の中にマイケル ムーアが居たらもっと面白いのにノなんておもいつつ。



追記:『黒蠅』のバトンルージュコーエン兄弟の『ファーゴ』が出てくると矢張りドキリとして楽しい。残念なのは原作ではなく、翻訳に「発展家」なんて死語が出てくるのが痛かったのです。定期的に翻訳家と自動車の免許は腕をチェックするような「実践」レベルテストをしては如何でしょうか?(誰がチェックする?)この作品ではありませんが、「ピーコック革命」なんて出た日には、謎解きよりも文章の謎解きの方で、一瞬、登場人間関係を失念できる位でしたよ。