『剣と薔薇の夏』戸松淳矩 東京創元社

万延元年、日本使節団が訪問するアメリカが舞台。
アメリカではジャポニズムがブームになりジャパニーズ・パイが至る所で売られている。そんなお祭り騒ぎの中の連続殺人事件。


歴史ミステリは、あまり読者に馴染みのない時代の場合、背景を説明をするのが必要だが、今作はその説明の文章を9割程減らしていただければ、非常に読みやすくなったし、その位減らしても良かったと感じる。ミステリのカテゴリに入れるなら。
万延元年のテキストとしてなら、この分量が必要。
良い文章もある。

アメリカ国民が日本人に熱狂しているというのは正確な言い方ではない。日本人という鏡に映った自分自身の姿に感動している、というほうが近い。問題はその自己愛を利用できると考えついた手合いが、いささか多すぎるのではないかということだ。


また、「公」という考え方が日本と違うこと等にも細かく触れている。


下二段組みで400ページ以上あるので、余程読ませる力がある作家なら問題ないだろうが、何日かに分けて読むと、見たて殺人等の工夫もあるが、登場人物の動きも余りないし、人種差別やリンカーンについても政治的意見も書かれていて目新しさはあるものの、ディクスン・カーを髣髴させる歴史ミステリの傑作とは言い難い。


一番残念なのは文章に力がない。
緊張感も同様。
テキストの寄せ集めのように感じる。作者がこの時代が本当に好きならば、必要ならば、何かもっと伝わってくるはず。
個人的にはこの時代も非常に好きなのだけれど。


歴史ミステリではないかもしれないし、泣かされたからかもしれないが、『ワイルド・ソウル』にはそれがあった。
本格ミステリよりも、高揚感を求める人間なので、私と同じ趣向の方にはお勧めいたしかねます。

            

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もしかすると、今、読んでいる本が『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』だからかもしれない。
この本はのっけから、すごい風圧だから。
パワーが違う。それこそベイルだけで装甲を吹っ飛ばしやがるかコイツな勢い。
こういう本が好き。こういうのが読みたい。こういうのに揺さぶられたい。
つい先日TVでお見かけした方とは…絶句。



1週間位仕事を追えて夕日に向かうと「色白の僕の手にかなづちを与えろ〜」と『ごきげんいかが工場長』が口からでてくる。
夏休みの学生達を観て感傷に浸っているんですね、きっと。
その頃よく歌ったから。



ここまで書いてUPして最新タイトルふとみたら、なんかジャンル無茶苦茶で凄く素敵な人みたい。アインシュタインが効いてるね。