『科学者と世界平和』中公文庫 BIBLIO20世紀 アルバート・アインシュタイン/著 井上健/訳 中央公論新社



私がアインシュタインを好きなのは鈴木 鎮一氏の『スズキ・メソッド』を支持しているようなところですが、原爆の(理論)を作ってしまった人が、長崎と広島を知って、後悔しない訳がありません。
牢無き虜囚のような葛藤に苛まれたことは想像にかたくなく、その後、如何に生きたかというところに、通常の心理学者の学究生活以上に興味を惹かれるのです。


そしてその数学的才能。
ホーキングの幾つかの著作でアインシュタインを否定せざるを得ない理論も教えてもらいましたが、それでも、アインシュタインは「理論」だけでなく、人間の印象が(見たこともない聖徳太子でも皆のなかに朧げに出来るように)存在するのです。

この著作から、いくつか抜粋します。


究極的な目標とは、平和を維持するために十分な立法上のかつそれを執行する上での権限を委ねられた超国家的な権威を樹立することです。


もしあらゆる市民が、この原子力時代における安全保障と平和にたいする唯一の保障は超国家的な政府をたえず発展させていくことである、と認識するならば、人は超国家を強化することにならなにごとでも、その力の限りを尽くすことになるでありましょう。


世界政府においては、構成諸国間の種々のイデオロギー上の差異は重大な結果を招くものではありません。
(中略)
もしもアメリカ合衆国とロシアがともに資本主義国であったとしてもーーあるいはともに共産主義国家であっても、あるいはともに君主国家であっても、話は同じですーー、両者の競争意識、相反する利益また相互の猜疑心が、今日両国間に存在しているのと同様の緊張状態を生むことになるだろう、と私は確信しています。

現在の国連ならびに将来の世界政府が奉仕すべき唯一無二の目標ーーそれは全人類の安全、平等および福祉の保障ということであります。


この提言は、ソ連の科学者たちから「帝国主義者の考える偽善である」という厳しい反論を受けます。当時の二極対峙の反映です。
アインシュタインは下記の反論を送ります。


同じ目的のために働いているさいに他の人の心を占めているものはいったい何かということは、全く念頭にないのであります。私が世界政府を擁護するのは、人間がこれまでに見舞われることになったもっとも恐るべき危険を除去する方法としては、それ以外に可能な方法は存在しないことを確信するからであります。全体的破滅を避けるという目的は、他のいかなる目的にたいしても優先するものでなくてはなりません。


後半の『物理学と実在』は量子力学の知識が必要になるので、これから…読みます。