『ツ、イ、ラ、ク』姫野カオルコ(角川書店)


「恋愛の最高傑作」という帯があり、2003年ベストという書評多数。
ついでに直木か芥川賞候補でもあったようですね。

それはそれは初・姫野カオルコ作品として期待して読みましたとも。


ネタバレ感想。
半分くらいまでは子供の話なので「早く終わらないかな」と思って読み、以降も…。

なんとなく類型的な話で、意表をつくキャラクタがいないので、突き抜けた印象がない。

「恋はするのでなく落ちるもの」で、落ちている状態を把握しないまま一生過ごしそうだったのが準子ってことですよね。多分、再会しないと自分が穴に落ちてるのに気付かなかったでしょう。


ぬぬぬ、何が物足りなかったかというと、やはり切れ味ってことになるのでしょうか。
また、神の立場である作者のチャチャがうっとうしかったのもあります。「男子よ、ゴムをつけろ!」みたいな。厚生労働省の認可を受けたいのか?道徳か国語の教科書に採用を狙ってるとか?
それこそ保健体育の教科書じゃねえって話でございますわよ。別に生で推進委員会員でもありませんが、とにかく何回かあるチャチャが、不要でした。作品世界に耽溺出来ません。ついつい、今どこで読んでいたっけなど、家の壁を見上げてしまう程の引き戻されぶり。いや、常に夢中になろうとして読む私がおかしいというのは無論有り得ることですが。


ディープ姫野ファンでなくても楽しめると、よく言われてますが、この作者の話って、全部こんなんなのかなあ。



一般的には辛抱たまらん共感度で嵐を呼ぶ大好評作ですので、書評で特に人気を博している40歳近い論者には外れなしみたいです。
私は特にこれを読んでも「ああ恋をしたい!」「落ちたい!」なんて頭を過りもしなかったし、身体も疼きもしませんでした。
これってもしかして共通因子として「世代の差」があるのではないでしょうか。
『ツ、イ、ラ、ク』はどの世代問わず面白いというのが売りみたいですが、そんなことはないでしょう。シンクロニシティってものは年代によって異なるものがあります。

ちょっと悪ぶって表現すれば、わたしはヒッピイでコミューンでラブイズオールな皆様が何も考えず拵えた団塊塊魂な第二次ベビーブーム世代だから揺籃から墓場まで争奪戦です。田舎出身の私でも臨時校舎だわ、希望校の倍率は高いわゴッドブレスミイですから、どうもこんな風にはイマイチツイラク出来ないのかもしれませんね。
ま、ツイラクしたことはありますよ。でもこの本のツイラクとは違うイカレかたでした。


是非、老若男女のコメントを頂きたいものです!


山田ズー二ー氏の著作を読んだので多少の反論には強くなった私ですが、まだまだ柳にはなれませんので、お手柔らかに。