『指が月をさすとき、愚者は指を見る』四方田 犬彦2004/02 ポプラ社 1450円

名科白といってもそんなに素敵な言葉ばかりではありませんが一冊に過剰な期待をするのがおかしいのです。作者は『貴種と転生 中上健二』の著者であり映画評論家の四方田氏。

終わりの方で一気に瞳孔が開く箇所がありました。「わたしの生涯の情熱は恐怖であった」トマス・ホッブスの項に冒頭からファンタスマゴリアの説明があったのです。これだけで、この本の価値は充分といえましょう。

18世紀の終わり頃革命による処刑や虐殺が一段落したパリで廃虚となった教会の礼拝堂を会場にしてマリー・アントワネットやロべスピエールといった革命の死者らの映像を投影し、見世物にした。
時間は真夜中で荒廃した墓地を横切らなくてはならず、恐怖にとらわれた中で霊の実在の講釈の後、幽霊が一人ひとり、登場し会場内が悲鳴と恐怖に包まれていった。

「よき細工は少し鈍き刀を使うという」吉田兼好タルコフスキーはこの言葉が好きで撮影中など勇気がなくなったときに引用していたそうです。

「理性の眠りは怪物を産む」フランシスコ・デ・ゴヤ

「青年を殺すのはたいがい青年です」魯迅

「明るいのは滅びの姿だ」太宰治

「男には二種類しかいないーープロか馬鹿だ」宍戸錠

「地上とは思いでならずや」稲垣足穂


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