『ガダラの豚』中島 らも 1993/03 実業之日本社  (1996/05集英社)

この本は…
骨太で真っ当に面白い!文庫解説も面白い!胸がすく!
いつ筒井的なスラップスティックになるのかと思いきや、あくまで地に足のついた力強い重厚な筆致。マジック・アフリカ・新興宗教密教…まるで、おつかいもの用詰め合わせ。文庫なら電車でも邪魔になりません!そして「噫、この方は今からあの感動を味わえるのね…」と羨望の眼差しを受ける事必至。少なくとも私のは。



10年前の本でも古さなんてないですね!
らも氏のこの本迄はリアルタイムで、ずーっと読んでいた(友人が、らも氏の相談記事を、私に毎週プレゼントしてくれていた位)…いたが、この余りの厚さにビビって止めてしまったのだ。止めて良かった。読んでいたら今頃尼さんになっていたかも。いやはや取材旅行無しでこれを書いたであろう、らも氏の頭の中を旅したいものだ。命綱はつけて。
私の好みである「登場人物がどんどん力強くなっていく」し、つまんないオチはないし、痛快、壮快、ホント正道。


しかし、こういう本を読むと常に考えるのが
「修行といって山に籠る人よりも介護のヘルパーさんや看護婦さんのが、よっぽど人間を分かってるのではないか」
忍辱行(にんにくぎょう)といって精進料理で怒りを抑えるのもアリかもしんないが、政治家が政治をやらずに政治研究ばかりしていたら意味がないように、空海に学ぶなら、空海をやって超えるのが宗教家じゃないのかなと。身近に2人坊さんが居るのですが、どーも…。人生に向き合う勇気もないっつーか、『花とみつばち』の鬼姉妹にしばいてほしいですわ!…みたいな…そんなんなんで。
いやいや、きっと高野山には『ファンシイ・ダンス』以上のぶっとび僧が居て下さるのでしょう!すみません、テキストが『孔雀王』と『ファンシイ・ダンス』で。