『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール』菊地成孔


最近のおすすめって?と対面で聞かれたら菊地成孔の名を挙げます。

音楽の、文学の、映画の、セックスの、料理の、言語学の、精神分析の、格闘技の、愛と憎しみと生と死の、憂鬱と官能にまみれたアマルガム

どうかしてる人をどうして好きになるのか常に読者に命題をつきつけてくれる菊地氏。そう饒舌なトリックにやられたいヒトにはぴったりです。

カヴァのフォトはアラーキーです。素敵です。やられます。理性との闘いです。写真でこれならライヴなんて行った日には…!!ということで2週間で返す本を5週間借りてました。
アラーキーの様々な男性を撮った(ダヴィンチの写真みたいに)写真集がほしい…。あるのかな…。

ドキドキで頁が捲れないのです。
写真でやられて、また中の文章でやられて好きな本100冊なんて文句の付けようもないやりっぷりで…。
女性の官能の師は森茉莉森奈津子で男性では菊地氏でしょうか。
様々な「愛」がありますが日本人作家でこれほど億面なくためらわずぽんぽん愛を連発するのは美輪明宏舞城王太郎と菊地氏くらいでは。←誉めてます。
官能だってひとりよがりでない愛がベースにないと暴力なので。

小沢健二『ECLECTIC』を聴いて


すげえ好き。とにかく、ここまで大人という記号をちりばめながら七五三のスーツみたいにしか聴こえない。という点が先ず天才的。
(中略)
作曲の構造だけ見れば、一番近いのは何と宇多田ヒカル
マイナー系の循環コードの上で、ラップに近いぐらいの字数の多い詞をフェイクみたいな。自由気ままで難易度は高い、細かいメロディーに乗せて。という形式ね。
(中略)
フリッパーズは日本が完全に貧乏デスステージにスイッチする前夜までキランキランに眩しかったバンドで、しかも「子役」だった。という二重の特権性があり、子供を作っても、ニューヨーカーになっても、現時点では未だにこの二重の輝きを失っていない。のですげえ素晴らしい。僕は大好き。取り留めない上に、おざなりだよこんな話。もういいですか?ノド渇いた(笑)。

現役東大教養学部音楽講師に私が反論出来る訳なく鵜呑にすることに。

パリには精神分析とも精神科とも違う、哲学カウンセリング。というのがあってちゃんと商売に成ってるんですよ。
狂人には政府から援助金が出るんですよ。

黄泉の国とこの地表数メートルほど上空を繋ぐ、エコーとディレイとパルファムとドレスアップの音楽で死と生を、憂鬱と官能を、記憶と失神と、サウンドと香り、ワインと料理によって溶解させる一種の祭壇

こんな文章がそこかしこに遍在しているのに舎弟に風俗をおごろうとして「彼女できたっす」と断られたとき、「マジかー!おめでとう!」と素直に喜んでいるのがちょっと不思議に健全で、更に素敵でした。


ああ東大に行きたい。
ライトとやりとりしてる菊地先生が見たいです。