『蒐集家(コレクター)』光文社

これは、期待していなかった割に好きな作家が揃っていて、内容も面白いものが多かったです。意外です。
井上氏は腕の良いコレクタですね。

先日の日記でも触れた中島らも氏の「DECO-CHIN」。事故三日前に書き上げた遺作。

編集者の声が震えていた。
「たいへんな問題作ですが…」その瞬間、彼の言いたいことが理解できた。
すなわち、大傑作だということだ。
電気を通されたように興奮しながら頁をめくり、読み終わった後、凄まじいまでの幸福感に襲われた。

こういう小説が読みたかった。
こういう中島らもが読みたかった。

現代カルチャーの<魔>に精通した中島らもならではの逸品中の逸品。
これは絶望への決別と、幸福の冀求をめぐる物語である。


井上氏のこの賛辞が一番美しい感想なのでこれで興味を抱いた方は、中島らもをまるごと受け止めましょう。

私はこの作品を読んだ後、非常に安堵しました。
腐って死んだのではなかったことに。


他にも夢枕獏氏の陰陽師シリーズはあるし、菊地秀行氏も短編が載ってます。お二人が一冊に載っていることがどんなに嬉しいことか…。

早見裕司「終夜図書館」では、読みたいライノベ名作がどかどか発掘されたし、岬兄悟『記憶玉』と飛鳥部勝則「プロセルピナ」これは少女が中年男を監禁するというジョン・エヴァレット・ミレイのくだりだけかも…久美沙織『人形の家2004』も救いあるストーリに驚きました。

表紙の韮沢靖氏の作品も素敵です。