『君らの狂気で死を孕ませよ ー 新青年傑作選』編) 中島河太郎 改版 版 2000/12角川書店


おおー、まるでシャフトや緑令が言いそうなタイトルではないか?。
s52の『モダン殺人倶楽部』を改題したそうだ。確かに甲乙つけがたい…が、今回のタイトルと海野十三作品があることが出色。

死体昇天(角田喜久雄)
精神分析(水上呂理)
人間灰(海野十三)
眠り人形(木々高太郎)
秘密(平林初之輔)
四次元の断面(甲賀三郎)
閉鎖を命ぜられた妖怪館(山本禾太郎)
陰獣(江戸川乱歩)

とまあ、メロンの熟した真ん中の美味しいところだけガブリとひとくち頂くようなラインナップですなあ!
思ったより、当然どれも良いんですが、ツッコミ入れられる作品だけ入れさせて貰いマス。

昭和3年の『精神分析』は水上 呂理の処女作でありながらフロイト精神分析を探偵小説に採り入れた記念的作品。ですが、閔子騫。女性が時計を遠ざける理由として「コッチ、コッチが実に性興奮の際の○○○○○の動悸に比せられている」。
他にも枕の合わせ目と頭、掛布団をつるして振る動作…等から性興奮の悩みがいかばかりかと懸念している。
…いやー、呂理!精神科医への道を歩まずにいてくれて有難う!後世の人間として礼を言います。

昭和9年『人間灰』。とぼけた文体も好いし、名探偵も出てくるし、先鋭なトリックは苛烈で徹底してるわ…。流石、痺れさせてくれるわ、海野十三(うんの じゅうざ)。


昭和10年の『眠り人形』、今でもこういう題材の物語があるけれど、もう70年前にこれが書かれているんだから、諦めてもらいたいものだ。
「ああ汝、われを見分かずといえども、なおわが恩愛を知るか」
…ってアンタ、自分がそんな身体に作り替えておいて…今日の人権擁護の見地からは甚だ不当・不適切ですヨ。筒井御大やバランシェなんて可愛いもんさ。

昭和3年の『陰獣』初めて読んだ時は『人間椅子』同様、恐さに震えたのに、今読み返したら、割と普通でした…。私は背なかのみみず張れが、日ごと蠢く陰獣って話でもあった気がしたが記憶が間違っていたらしい。
失敬失敬。赦してくれ給え。